I さん(当時31歳)は月に2回ほどのペースで来ていただきました。
最初は鍼灸治療・・・?と思いながらも半信半疑で月に2回の
ペースで来ていただきました。
当時は推拿(すいな)整体(中国伝統式整体)の60分コースも取り入れていたので、
1回は推拿整体、1回は鍼灸治療で治療させていただきました。
現在は整体コースはやっておりませんが、必要に応じて
軽く10分程度の推拿マッサージは取り入れています。

3か月目は週に1回のペースで来られました。
そして生理が始まりました。
今回の生理はプレマリンとデュファストンの服用後によるものです。
基本的に I さんは自力で生理を起こすことができなくて、
無排卵の状態です。
ただ、今回の生理が違ったのは、生理の色がいつもよりきれいな赤色に
変化していたようです。

生理も軽く感じたようで、生理痛も軽減されていました。
生理の色がきれいな赤色になってくるということは、子宮内膜の血行が
良くなっているということです。

そしてもう一つ変化を感じられたのは、疲れて出てくる吹き出物が
減ったということ。
お風呂上りに化粧水を顔に塗ると、いつもよりしっとり感が出てきたように
思うと言っておられました。
それは治療によってセラミド(細胞間質液)が増えたからでしょう。
体の細胞がイキイキとしてきたということです。

I さんがペースを速めて良く来られるようになったのは、
普段仕事で疲れているので、治療に来られるとストレス発散にもなるし
体も軽くなるから・・・ということでした。
私はそんな I さんにアドバイスしました。

「そんなに根を詰めなくてもいいよ・・・」
「仕事も忙しいやろうし、来れる範囲で来たらいいんとちゃう」

・・・するとIさん、わぁ~っと泣き出してしまいました。
いつも気丈にふるまってにこやかにしていたのに・・・。
なかなか涙は止まりません。

仕事柄良く患者さんに泣かれることも多いので、
関西ならではのいつものネタでスタッフに指示を出しました。
「I さんはナイアガラの滝のようにいっぱい涙出るね」
「涙ふく木綿のハンカチーフはないけど、クリネックスやったら
いっぱいあるから箱ごと枕元に置いとくよ」
「5分ほど寝といてね・・・」

・・・涙ふく木綿のハンカチーフというのもなんだかなぁ、
ネタ的に古いですが、みなさん良くわかってくださいます。
太田ひろみのヒット曲ですが、青春のころの切ない思い出を歌った
詩とメロディーはいつの時代も色褪せないですね。

治療室のカーテンを閉め、カーテンの中からはたいがい、
ズズーっとティッシュで鼻をかむ音が聞こえてきます。
ちょっと気持ちが落ち着いた頃を見計らって、
もう一度お話をはじめます。
ティッシュは使い放題なので、予想より減っていることもしばしばです。

彼女は随分と心に大きなしこりを抱えていたようでした。
「いっぱい胸に辛いこと抱え込んでいたんやな」
「少しペースを落として治療に来てください」・・・とアドバイスしました。

基本的に1週間に1回のペースで治療に来ていただくのは、
妊娠体質づくりにとっても良いと思います。
その方が治療させていただく側としても、経過が見やすいし、
治療の効果も出やすいです。

ただ、I さんの場合、仕事のお話を聞いていると、かなり無理をして
スケジュールを組まなければならなかったからです。
治療に来ていただくのはありがたいのですが、
少し先を見て治療に来られる方がいいと思います。

診察や採卵、胚移植などで病院の予約を取らないといけないし、
その合間を縫って鍼灸治療に・・・と考えると疲れてしまうでしょう。

その後、 I さんは少しペースを落としながら来れる範囲で治療に
来られるようになりました。
当院に来られるようになって4カ月が過ぎ、次の年を迎えることになりました。
次の年というのは、2011年のことです。

彼女の不妊治療はこれからが大変だったのです・・・。

to be continued
Omura