前回、排卵を遅らせる鍼灸の1~2で、
実際の症例をご紹介させていただきました。
不妊治療の鍼灸を始めた20年ほど前は僕も鍼灸師として
まだまだ未熟者でした。
患者さんの体調を整えて妊娠の準備のための治療をするのが
精一杯で、今のような月経周期に合わせた治療法ではありませんでした。

臨床経験を積み、多くの患者さんに出会い少しずつ試行錯誤を重ねて
現在の治療法にたどり着いたのです。
女性の生理周期に着目するようになったのは、
上海に留学して現地の大学病院の臨床をするようになってからでした。
上海中医薬大学の大学病院での治療は主に
脳こうそくや脳出血で全身の麻痺や片側だけが麻痺する片麻痺の患者さんを
専門にされていた陳先生に指示しましたが、
麻痺の治療以外に様々なことを学びました。日本に帰ってきて
上海留学で学んだことを臨床の場で活かそうと思っていた矢先に
足立病院の不妊センターで鍼灸治療をやってみないかとお誘いを受けたのです。
上海留学前にIVF大阪クリニックとIVFなんばクリニックで不妊治療専門の鍼灸治療で
多くの方が妊娠された実績をかわれてのことでした。
足立病院での不妊治療専門の治療は留学で学んだことと今までの経験を
活かすことのできる場となりました。

排卵を遅らせる治療法も多くの患者さんが採卵前に排卵していて
困ってしまっている人が多かったのです。
患者さんに、「排卵を遅らせてくれたら採卵できるのに」・・・と、
ポツリと言わりることが多かったので、
排卵を遅らせる鍼灸治療に取り組むようになったのです。
試行錯誤しながら、不妊治療に良く効くツボを使いながら臨床を重ねて
現在の方法にたどり着いたのです。

東洋医学の「陰」「陽」とがつくる陰陽理論をベースに考えれば
排卵を遅らせることは可能なのですよ。
卵胞が早く成長しすぎたり、LHと卵胞の成長のバランスが悪かったりして
排卵が早まるのは体を冷ます力の「陰液」が少ない人に多いように思います。
下半身は冷えているけど上半身はのぼせる。
また全体的に低温期なのに手足が火照る。高温期だとなおさら火照り感が
強くなり、寝汗を良くかきのどが良く乾くような症状がみられます。
「腎陰虚」タイプですね。

また日ごろから下半身もお腹も冷えてしまって、なかなか体が温まりにくい
というタイプの冷え症の人も排卵が早まる傾向にあります。
血行が悪く子宮と卵巣に血液がスムーズにいきわたらなくて、
卵胞が成長するのに必要な時間を待たずに排卵してしまうという
タイプの人もおられます。
こちらは反対に「腎陽虚」タイプに属します。

どちらも「気」のパワー不足がベースにあります。
それぞれのタイプに合わせて排卵止めの鍼灸のツボはかわってきます。
採卵のときに排卵してしまっていてなかなか採卵できなくて・・・と
お悩みの方がおられましたら、当院の治療にトライされてみてはいかがですか。

Omura